印刷の「黒」の種類

印刷に使用される3種類の黒「スミベタ(K100%)」「リッチブラック」「4色ベタ」について、それぞれの特徴や使用上の注意点を解説します。

よりきれいな印刷データ作成のため、また印刷の際のトラブルを防ぐために、ぜひご確認ください。

一般的な印刷では、シアン・マゼンタ・イエロー・ブラック(CMYK)の4色のインキを混ぜ合わせて色を表現します。

CMYKで表現される「黒色」は1種類ではなく、同じ黒でもCMYKの混ざり方(各インキの濃さ)によって複数の種類があります。

以下に3種類の黒「スミベタ(K100%)」「リッチブラック」「4色ベタ」をご案内します。

K(ブラック)が100%の黒色のことを「スミベタ」といいます。

スミベタ

スミベタの特徴

リッチブラックの項目で後述する「見当ズレ」の影響がないので、文字や細い線などによく使われます。

歌詞カードの黒い文字などはスミベタを使うのがおすすめです。

仕上がりは「真っ黒」というよりは少し茶色がかった黒色で出力されます。

スミベタの注意点

ピンホール(白抜け)

スミベタを使って広い範囲をベタ塗りすると、「ピンホール(白抜け)」が発生しやすくなります。

スミベタは広範囲にわたるベタ面には不向きです。

ピンホール(白抜け)のイメージ
オーバープリント処理

スミベタで作成されたオブジェクトは「オーバープリント処理」されます。

オーバープリント処理された場合は、下に重なって配置したデザインが印刷時に透けて見えてしまうことがあります。

オーバープリントイメージ

K100%の他にCMYを使い、4色すべてをかけ合わせた黒色のことを「リッチブラック」といいます。

リッチブラック

当店では以下の割合を推奨しています。

C:40% M:40% Y:40% K:100%

CMYKの値の合計が300%以上になるとインキが濃すぎて事故の原因となります。

写真データなど、カラーモードをRGBからCMYKに変換したオブジェクトは、黒のCMYK合計値が300%を超えてしまう場合があるので、濃度には注意が必要です。

リッチブラックの特徴

スミベタと比べて、つやあるしっとりと濃い黒に仕上がります。

スミベタで起こるピンホールやオーバープリントの問題がないため、広範囲のベタ塗りに適しています。

リッチブラックの注意点

見当ズレ

リッチブラックは複数の色を掛け合わせるため、見当ズレ(印刷時にわずかに位置がずれてしまう現象)が起こりやすく、細かい文字や細い線には適していません。

見当ズレのイメージ

CMYK全て100%で構成された黒色のことを「4色ベタ」といいます。

4色ベタ

4色ベタの特徴

最も濃い最強の黒を表現することができますが、使用するインキ量が多すぎるため、通常の文字やオブジェクトには使用されず、デザイン範囲外のトンボ等に使われます。

印刷物のデザインでの4色ベタの使用はしないよう、注意が必要です。

4色ベタの注意点

全ての色を最も高い濃度で掛け合わせるためインキが渇きづらく、他の紙への色移りや紙同士がくっつくなど、事故の原因になります。

3種類の黒のうち「4色ベタは厳禁、目的によってスミベタとリッチブラックを使い分ける」ということはわかりました。

しかしPC画面上ではどの黒を使っているのか見分けづらいです。

ここではAdobe IllustratorとAdobe Acrobatで黒色を判別する方法をご紹介します。

Adobe Illustrator

Illustratorでの黒色の確認方法
  1. 編集
  2. 環境設定
  3. ブラックのアピアランス
  4. すべてのブラックを正確に表示

上記の設定をおこなうと、黒色の見た目にわずかに差が出る(スミベタが少し灰色がかって表示される)ため、使っている黒が何なのかを見分けることができます。

Adobe Acrobat(PDFファイル)

PDFで出力したファイルなら、Acrobatでも黒を確認することができます。

Acrobatでの黒色の確認方法
  1. 表示
  2. ツール
  3. 印刷工程
  4. 出力プレビュー
  5. 調べたい黒色部分をカーソルで触る

上記の操作をおこなうと、カーソルが乗っている部分の色の数値を確認できます。

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